稲越功一さん

日本を代表する写真家のひとり
稲越功一さんが亡くなられました。

『花時間』という雑誌の編集者時代、
巻頭のページにて、毎月、
稲越さんの写真と、歌人の俵万智さんの短歌による
花をテーマにした連載を
3年間、担当させていただいたことがありました。

もう十数年もまえのことです。

花束のように抱かれてみたく

その後、その連載を単行本にまとめる編集も担当し、
単行本発行にあわせて、
稲越さんの写真展も開催していただいて、
稲越さんには、ずいぶんと長い期間、
お世話になりました。

何十足も同じものを購入してある、とおっしゃっていた、
トレードマークでもあった白いスニーカーに
紺のスーツがお似合いの
とてもダンディな方でした。

原宿駅の目の前にある事務所には
いつ伺っても塵ひとつなく、
デスクには、
おしゃれな洋書や写真集が置かれ、
その周りには、
木の実や石など、
稲越さんの写真にときどき登場する
オブジェたち。

すべてが、隙のないほどに美しかったけれど、
だからといって、けっして
インテリアショップやショールームのような
無機質で温度のないきれいさではなく、
部屋中に、稲越さんの空気を
漂わせる、なんともくつろぎの空間でした。

「皆に『マメ越』っていわれるんだよ」と
ご自分で笑っていらしたほど筆まめで、
写真展の案内状や年賀状など、
これも、トレードマークともいえる、
ブルーの色鉛筆を使い、
いつも直筆でお送りくださっていました。

洗練されたセンスの方だったけれど
でも
東京以外にきちんと‘ふるさと’のある人が漂わせる
ぬくさをもった方でした。

これからまだまだたくさんの撮影を
勢力的に手がけられるはずであったであろう
68歳という若さでお亡くなりになったことが
惜しまれてなりません。
でも、稲越さんが残してくださった
写真、写真集、ビデオ、エッセイなどの作品は
これからも
きっとたくさんの人たちのこころのなかに
たしかななにかを刻んでいくことでしょう。

お仕事をご一緒させていただいた
『花束のように抱かれてみたく』
わたしにとっての宝物です。
稲越さん、ありがとうございました。

*4月12日まで、東京・銀座の
ライカ銀座サロンにて、稲越さんの
『芭蕉景』という写真展が開催されているようです。

コメント

  1. yoko より:

    稲越さん、本当におわかかったですよね。
    いつも、印象的でストーリーを感じる花の撮り方をなさっていましたね。

    mamiさんとご一緒された本も、私にとっても宝物、大切にしています。

    洗練された暮らしに心地よさがあるなんて、理想的だと思います。
    私もそんな人になりたいです。
    まずは、身の回りの掃除から、、、でしょうか。

  2. mami より:

    yokoさま、コメントありがとうございます。
    稲越さんの写真は、独特の世界観がありますよね。お花の写真も、毎回、その花その花で、違ったアプローチをしてくださって、仕上がった写真をいただくのが楽しみでした。

    稲越さんの事務所は、ほんとうにおしゃれでしたが、なんとも居心地のいい空間でした。きっと稲越さんのお人柄が部屋にもあらわれていたのでしょうね。

タイトルとURLをコピーしました