『花の秘密』という美しい本を
たびたび取り出しては、ながめ、読み、を繰り返しています。
これは、『英国、花からはじまる旅』『イラクサの小道の向こう』という
イギリスに関する本の著者で、
友人でもある、並木容子さんの新刊書です。
わたしは英文監修という形で
ほんの少しお手伝いをさせていただいたのですが、
出来上がった本を受け取ったとき、
思わずその本を撫でていました。
もちろん、そーっと。
そう、きれいな花束を受け取ったときのように…。
本の中に出てくるのは
すべて日本国産の花ばかり。
並木さんが、日本で花の育種、生産をしている農家の方たちをたずね、
そこで出会った人々の様子や
その土地の様子を伝えてくれます。
そして、その「メイド・イン・ニッポン」の花を使ったアレンジは
並木さんに、そうして活けてもらうときを
ずっと待っていた…というようなたたずまい。
まるでそれぞれに魂が宿っているかのようです。
アレンジはどれも
趣や個性が違い(まるで人間のように、
アレンジひとつひとつにもキャラクターが感じられるんです)
どれかひとつを選ぶなんて
できないのですが、
わたしは17ページ、58ページのパンジーの花あしらいが贔屓。
何度も繰り返し眺めています。
撮影は山本正樹さん。
花(フラワーアレンジ)の最高の表情をとらえることでは
多分、このフォトグラファーの右に出る方はいないだろう、
というくらいに
写真家として、花と長くつきあい、花をご存知の方です。
たとえば57ページには、
花の影だけが写し出された一枚があるのですが
その写真からですら、花の香りが漂ってきそうです。
また、並木さんが書かれた文章にも
花への愛、
そして、花をつくり出す人たちへの
尊敬、感謝の念があふれています。
126ページで、バラの生産者の方のことを
「鳶色の瞳をもっている。」と
綴る並木さん。
なぜ「鳶色の瞳」なのかは
本を読んでいただくとして、
こういうことを書けるのは
やはり、たびたび生産者の方たちに会いにでかけ、
目を見て話をし、
彼らのつくり出した花を
日々慈しみながら
その生まれた場所を想いながら
アレンジし、販売している
並木さんだからこそ、
と思います。
ところで、この本が出版されるまでには
長い時間がかかったと聞いています。
通常でも、一冊の本ができあがるまでには
たくさんの人が関わり、
時間がかかります。
この本は、さまざまな事情で、
構想、撮影・取材時期から
数年を経て、出版されました。
著者の並木さんはもちろん、
カメラマンの山本さん、そして、編集者の渡辺尚子さん、
デザイナーの鈴木恵美さん(皆さん、わたしの友人・知人であり、
尊敬するクリエイターの方々)の
「美しいもの、すばらしいものを伝えたい」
という熱い想いが、
こうして
一冊の本という形になったことを
とてもうれしく思います。
ぜひ、手に取ってみてください。
ページをめくれば、
花たちがそっと秘密を語りかけてくれるはずです。
*『花の秘密』
著者:並木容子
撮影:山本正樹
編集:渡辺尚子
ブックデザイン:鈴木恵美
発行:株式会社ラトルズ
定価:本体1900円+税
コメント
Mamiさん こんにちは^^
山本正樹さんの写真は、私も大好きです。
というのも、妻がオレンジページを買っていたので、ずっと洗面所の横の
カレンダーは、きれいな、独特な印象の、花のカレンダーなんです^^
あと、パンを撮られてる写真も好きで、皿の一部が絵面から切れる表現
とか、プレゼンやパンフ作りでまねしたことがあります^^;
Hiroさん、コメントありがとうございます。
山本正樹さんのお写真ご存知だとはさすがです! 「皿の一部が絵面から切れる表現」ーーそう、対象物を美しく、そして印象的に写し出すんですよね、山本さんの写真って。
昔、山本さんから直々に何度か写真のてほどきを受けたことがあるのですが、今思えばなんと贅沢な写真レッスンだったことか…と思い出しました。
この『花の秘密』の写真も素晴らしいので、ぜひご覧になってみてくださいね!