マクギネス真美がお届けしている連載「グローバル日本人」シリーズ。前回の記事では、「グローバル日本人」とはどういう人たちかについてご紹介しました。
今回は、そのグローバル日本人にとって、活躍の機会が広がっていることについてお話ししたいと思います。
さて、私がイギリスに住みはじめて20年以上経った今、強く感じていることがあります。それは、英語圏を含む海外で、日本への関心がさらに広がり、深まっているということです。
特に最近の日本への関心は、かつての寿司・ラーメンといった食や、アニメやゲームだけにとどまらなくなってきていると感じます。
たとえば雑誌『The Economist』が、日本の音楽喫茶が世界各地に広がっている現象を取り上げ、「Japanomania(日本マニア)」という言葉まで使っていることにも、その広がりが表れています。
確かにここ数年は、建築やインテリア、デザインの分野でもブームともいえるほどに日本的なエッセンスを取り入れたものが紹介され、さらには、日本の普段の暮らしのあり方、その精神性、美意識や哲学などに興味をもち、取り入れようとしている人たちもたくさんいます。
このような現状を見ると、今、グローバル日本人にとっては、たくさんのチャンスが訪れていると言っても間違いではないと思います。
世界には今、日本ブームが起こっている
私がイギリスに住んでいて、特に最近、肌で感じる変化があります。というのも、少し前までは、私が日本出身だと知ると、「いつか日本に行ってみたい」「日本に行くのが夢なんです」と言われることがよくありました。ところが近年では「去年、日本に行ってきた」「日本が大好きでホリデーには毎年日本に行っている」と、すでに日本を訪れたことのある人から話を聞くことが増えたのです。
実際、夫の親友はこの春、家族四人で念願の日本旅行を果たし、先日会った時には、日本での時間がいかに素晴らしかったかを熱心に聞かせてくれました。
そしてこれは私の周囲だけで起きていることではありません。2025年の訪日外国人数は 4,268万3,600人と過去最高を更新。英国からの訪日客数も年間で過去最高となりました。
でも私は、この数字以上に、重要な変化が起きているように感じています。
それは、先述したように、今や世界の多くの人々は、日本の生み出すプロダクトはもちろんのこと、日本という国そのもの、また日本がもつ精神性にまで興味を持ち始めているということです。
日本の中からではわからない世界の動き
世界におけるこの変化にはいくつかの大きな要因があります。
1、日本人が当たり前だと思ってきたものに、世界が目を向け始めている
禅、金継ぎ、侘び寂びといった、日本に深く根づく思想や美意識が、今では海外のライフスタイルやデザイン、ウェルビーイングの文脈でも語られるようになっています。
また、マンガ、アニメ、ゲーム、キャラクターといった従来から人気のコンテンツも、世界市場でさらに存在感を増しています。日本のコンテンツ産業の海外売上は、2022年の4.7兆円から2023年には5.8兆円へと拡大しました。
また、興味深いのは、世界が注目しているのが、いわゆる「輸出用」に作られた日本文化だけではないということです。
つまり、これまで長い間、グローバルなビジネス環境では「わかりにくい」と言われてきた日本の繊細さ……たとえば、言葉にしなくても伝わる感性、余白を大切にする美意識などが、世界から注目され、日本人以外の人々が、その感性や精神を学び、取り入れようとすらしているのです。
2、海外に出なくても、世界と出会える時代になった
最近の日本のインバウンド政策では、訪日客数の拡大だけでなく、地方への誘客や、高付加価値な体験、また、持続可能な観光がこれまで以上に重視されるようになってきています。
北海道のニセコが、世界中から旅行者がやってくる国際的なスキーリゾートとして知られるようになったのは、その象徴的な例のひとつでしょう。そして今では日本各地の宿泊施設や観光事業が、海外からのお客さんとダイレクトにつながる機会も広がっています。
これは東京にいなくても、また、海外に行ったことがなくても、グローバルな世界と接点を持てることを意味しています。つまり、日本にいながらグローバル日本人として生きられる時代が来ているということです。
前回の記事 でもご紹介した、私のポッドキャスト“The Real You with Mamita”のゲストで、内閣府クールジャパン・プロデューサーでもある櫻井亮太郎さん は、中学卒業後に渡米し、10年間の海外生活を経て1999年に帰国。インバウンドの力で地域経済の活性化を目指し、現在は日本と世界を繋ぐブリッジとして国内のグローバル化を支えるグローバル日本人のひとりです。
YouTubeチャンネル“Ryotaro’s Japan”で海外にも多くのファンを持つ彼は、これまでの事業に加えて、2026年には旅行会社UMAMI Travelの経営にも参画。世界と日本の地方をつなぎ、地域経済の活性化につなげる取り組みをさらに広げています。
このように、海外の人々のニーズを熟知した起業家が、さらに海外の人を日本の地方に迎え入れようとしているというのは、「日本の地方にいても世界とつながり、そこからビジネスを生み出すことができる」状況だと考えることができるのではないでしょうか。
3、英語が完璧でなくても、自分の言葉が世界に届けられる時代
かつてグローバルに発信するには、出版社や大手メディアという「ゲートキーパー」を通る必要がありました。
ところが今では個人が世界にダイレクトに発信することへの壁が、以前に比べて格段に低くなりました。
たとえばnoteは2026年5月27日から記事の自動翻訳を全クリエイターに提供。開始2ヶ月で、英語に翻訳された記事は世界225の国と地域から読まれたといいます。また、日本語のYouTube番組が世界各言語の字幕で視聴され、X(旧Twitter)でもAIによって異なる言語の投稿を自動翻訳し、言語の壁を越えてユーザーに推薦する仕組みが始まっています。
このように、現在では、英語が完璧でなくても、日本語で考え、日本語で発信したものが世界の誰かに届く可能性が、以前より大きくなっているのです。
「本当の自分」でキャリアも人生も選択
キャリア選択においても、グローバル日本人へのチャンスは広がっています。
たとえば、ポッドキャストのゲスト石川華代さん は、日本で教員、学習塾の経営者として働きながら、テストや暗記に追われて苦しそうな「日本の子どもたちを救いたい」という強い思いを抱いたそうです。
そして彼女は日本でのキャリアをすべて手放し、アメリカで「心も体も魂も全部育てていく」という全人的なアプローチのシュタイナー教育を学びました。その後、書籍出版、オンラインでの教育など、イギリスに住みながら、日本の子どもたちへのシュタイナー教育に長年携わっていらっしゃいます。
私自身、コーチとしてオンラインを中心にセッションをしていますが、私がイギリスで暮らし、日本ではできない経験をしたり、海外の先生やメンター、コーチから学んでいることで、日本に住むクライアントの方に新しいものの見方、考え方を伝えることができています。一方、逆に外国人のクライアントの方には、私が日本人として培ってきた、あるいは身につけてきた思考や視点をシェアしています。そしてこれは、自分が日本と海外、両方での人生経験をしたからこそできることだと感じています。
そして、私自身の経験と、これまでコーチングのクライアントの方々やポッドキャストゲストの方々が語ってくださった、グローバル日本人 にとってのチャンスを考えてみると、たとえば以下のようなことが考えられます。
・「当たり前」と思っていた自分の経験が「専門性」になる
異文化の中での失敗や言葉にできなかった悔しさ、海外経験などが、単なる苦労話ではなく、文化の違いを理解する実践的な知恵・リソースとなり、自分ならではの専門性となる
・日本にいても世界と仕事ができる
インバウンド、オンライン発信、AI翻訳、海外向けサービス、海外コミュニティとの接点などによって、場所に縛られないキャリアを選べる
・日本と世界をつなぐ「架け橋」になれる
観光、教育、翻訳、発信、地域活性化、アート、食、ウェルビーイングなどを通じて、日本文化の背景や文脈を伝え、日本と世界をつなぐことができる
・「人生の選択肢」を広げられる
生き方、働く国(場所)、パートナー、教育、キャリア、老後など、人生のさまざまな面で視野と選択肢がひろがる
・世界中に仲間を作る機会が増える
日本の外にもつながりをもつことで、仲間が増え、活動の場が広がる
・どこの国の誰であっても、信頼関係を築く力を磨くことができる
言語や文化を共有していない人との交流を通じてコミュニケーション力が磨かれ、人間として成長する機会にもなる
実際にグローバル日本人として活躍している人たちの話からわかるのは、あなたがこれまで「当たり前」だと思っていたあらゆる経験は、実はこれからの時代の強みになる可能性があるということです。
なぜなら、日本だけを知っている人にも、海外だけを知っている人にも見えないものが、あなたには見えているから。そしてそれを体感し、体験として知っているからです。
だからこそ、チャンスを活かすことができれば、個人として、人生の充実感や幸せをさらに感じられる可能性もあるのではないでしょうか。
グローバルに活動する際には、現地の文化を理解し、その場所に適応する力が求められることは今も変わりません。ただ現在は、自分のバックグラウンドを消して「現地の人と同じようになる」ことが、世界で活躍するための必須事項ではありません。
むしろ、日本にルーツがあるからこそ持っている視点や感性、経験そのものを、自分の強みとして世界に提供できる機会が増えています。
そんな今だからこそ、あなたもグローバル日本人として、あなたらしくチャレンジをする機会が広がっていると言えるのです。
【コーチング・クエスチョン】
⚫︎あなたはどんなことでグローバルにチャレンジしていますか?
⚫︎あるいは、これから世界に向けてチャレンジしてみたいことは何ですか?
*この記事は「グローバル日本人」シリーズの第2回です
1.グローバル日本人とは? ー 日本と世界のあわいを生きる人たち
2.なぜ今、グローバル日本人にチャンスが広がっているのか
3.日本では「外国人」すぎて、海外では「日本人」すぎる — グローバル日本人の孤独とは
